2010年10月5日火曜日

研修の作り方、研修体系の作り方

今日は、研修体系の作り方の概要を簡単に説明します。以下に、順を追って説明します。



Ⅰ. まず研修体系を考える前に、企業のビジョンや社是を確認する
 急速に成長した会社などは社是も無い場合があるかもしれないが、要はその企業が何を目指すかを考える。ゴールが明確でなければ、走者である社員は様々な方向を向いて走ってしまう。

 人事責任者でさえも、自社のビジョンが曖昧なことがあるが、そういう場合は、社内で社長を含め、徹底的に議論し、明確にする。

Ⅱ. 企業(事業)戦略~アクションプランを明確にする
 ビジョンを達成するための戦略を明確にし、各部署がどの様なことを具体的に行わないといけないのかを期限付きで計画する。

Ⅲ. 欲しい人財を明確にする
 今後必要となるであろう人財がどんなかを議論し、スペックを出す。これはスキルのみならず、姿勢や知識なども含めると良い。

Ⅳ. 欲しい人財を育てる研修体系を構成する
 欲しい人財が決まったら、あとはどの様にその人財を育てるかを考えるだけである。もちろん人材開発は研修だけでなく、様々な方法がある。研修の役割の大部分は気づきである。受講者は研修後に復習し、学んだ分野を自分で深掘しない限り、ほとんどのスキルや知識は自分のモノとはならないであろう。結局は受講者自身の問題だ。馬を水飲み場まで連れていくことはできても、飲ませることはできない。

 横道にそれたが、今回は研修体系の作り方なので、研修を実施すると仮定する。研修体系の考え方でよく用いるのが、縦軸に階層、横軸に部署をおいたマトリックスである。そうすることで、どれくらいの役割の人間(例:若手層や課長クラスなど)がどの部署の場合、何を学ばないといけないのか、逆に言うと、何が必要で、会社からは何が求められるのかを理解しやすくなる。

Ⅴ. 各研修の目的を明確にする
 研修体系が決まれば、次は各研修を設計する。当たり前だが、まずは目的を明確にする。何を教えたいか。

Ⅵ. 研修の構成要素と制約条件を確認する
 目的が決まれば、あとはどこで、誰(何人)に、何時間で伝えるかを確認して、目的を伝えるための構成要素を考える。

 構成要素とは、講義であったり、アイスブレイク、ミニゲーム、グループディスカッション、個人ワーク、休憩、動画視聴、アセスメント、アンケート等々。これらを何時間に収めるかを意識して構成する。注意しなくてはいけないのが、社会人ともなると、1時間以上の講義を聞くことは可能だが、頭に入っているかは別である。大人は文字から覚えるよりも五感を通して、体験として記憶する方が得意である。従って、できる限りゲームやグループディスカッション、ワークなどを多用し、それらを通して、伝えたいことを受講者自身が気づいて学ぶことが理想である。

Ⅶ. 最後に構成要素の中身を設計する
制約条件と構成要素が決まれば、あとは詳細をつめるだけ。各要素で何を話し、何をやらせるか。どんな言葉とどんな表情で伝えるかまで、事前に細かく検討すべきである。ここでも、絶対に研修の目的を忘れないこと!最後にアンケートで何を学んだかを聞くことによって、逆に受講者に学んだことを思い出させる効果があるので、オススメである。あとは、準備をして実施するのみ!

 ウルトラ簡単に概要を説明したが、研修の開発までを行う方法は大きく4つある。
  1. 人事系コンサルタントに研修開発体系から一緒に構築してもらう
  2. 研修業者に一部の研修を実施してもらう
  3. 市販の研修本や、研修教材を利用して実施する
  4. 社内のスタッフで全て行う
 1.は、費用がかかるが、研修開発体系を一緒に構築する中でプロジェクトメンバーが得る知識もかなり大きい。初めに説明したが、研修開発体系を作るには、企業の目指すべき方向をしっかりと明確にしなくてはいけない。その過程を通して、プロジェクトメンバーが成長するというわけだ。また、コンサルタント会社も企業をしっかり理解できるので、必要で有用な研修を構築しやすくなる。お互いにメリットが大きい。

 2.も、ある程度費用がかかるが、あまり外れない。「あまり」と書いたのは、企業の要望にしっかり応えず、有り物の研修プログラムで実施すると、講師のスキルによっては、受講者が腹落ちせず、何時間も時間を割いた意味が無い場合がある。コストの制約もあるだろうが、できる限り要望に応えることができる業者をオススメする。

 実際に2.を選んでいる会社も多いだろう。特に管理職研修はなかなか社内で実施することはできず、社外講師が必要となるので、社外に頼んでいる場合が多い。確かに、その方が受講者も納得しやすい。逆に新入社員研修は、新人に求めることを社外の人から言われてもしっくり来ないことも多いので、社内の人間の方が良いだろう。ただし、ベーシックなビジネススキルやビジネスマナーは、どこも同じなので、社外の専門業者の方が間違いを教える心配が無く、しかも安価な場合がほとんどなので、検討してみる価値はあるだろう。最近は、特に大都市圏では、定額制の研修スクールが多い。これらはどれも、従来と比較すると破格なので、中小企業にとっては一定期間利用するのは価値があるのではないかと思う。

 3.と4.を実施するのは、ある程度の経験を積んだ講師がいる場合に限ったほうが良いだろう。なかなか市販本から充実した研修を未経験の方が作ることはできないだろう。研修教材であれば、丁寧なトレーナーマニュアルが付いたものもあるので、ほとんど未経験でも可能な場合がある。

結局は予算や、社長の人材開発の思い入れ次第で決まることが多いが、いくら内製にこだわっている企業でも、社外から学ぶ機会をシステムとして作る意義というのは、単純に研修の効果のみということではないと思う。